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医療関係者のみなさま

ABPM/家庭血圧測定

Ambulatory Blood Pressure Monitoring/Home Blood Pressure Measurement

田中一翔(東北大学大学院薬学研究科医薬開発構想寄附講座)
原 梓(東北大学大学院薬学研究科医薬開発構想寄附講座)
今井 潤(東北大学大学院薬学研究科医療薬学講座 東北大学大学院医学系研究科 内科病態学講座臨床薬学分野)

ABPMおよび家庭血圧測定(HBPM)の有用性は日本,欧州および米国の高血圧ガイドライン(JSH2004,ESH-ESC2007,JNC-7)に記載されており,現在,ABPM/HBPMは高血圧診療において診断・治療の重要なツールといえる.

緒言

近年話題となっている白衣高血圧・仮面高血圧は,自由行動下血圧測定(ambulatory blood pressure monitoring;ABPM)あるいは家庭血圧測定(home blood pressure measurement;HBPM)を用いなければ診断できない.ABPMおよびHBPMの有用性は日本,欧州および米国の高血圧ガイドライン(JSH20041),ESH-ESC20072),JNC-7)に記載されており,現在,ABPM/HBPMは高血圧診療において診断・治療の重要なツールといえる.

ABPMの臨床的意義

ABPMの目的は仕事,食事,休息,服薬など,人それぞれにおける自由行動下での日常生活活動に修飾された,ある特定の1日の血圧の総負荷および変動を測定することである.また,特定の時間帯をねらった降圧治療,例えば夜間睡眠時の血圧コントロールについての情報や,心血管合併症が多く発症する早朝高血圧の診断・治療にも,ABPMが有用である.

最新のESH-ESC20072)は,ABPMの有用性を強調しており,外来血圧の変動が大きい例,他の心血管リスクが低い患者における外来血圧高値例,降圧薬抵抗性,高齢者や糖尿病患者における低血圧症状,妊婦における外来血圧上昇例において,ABPMの実施を勧めている.

ABPMを用いた血圧管理

一般地域住民を対象とし平均約11年間追跡した大迫研究において,自由行動下血圧(ambulatory blood pressure;ABP)と脳心血管系死亡リスクとの間には,直線的なthe lower,the betterの関連があり,その予後予測能は随時血圧より優れていた.また,デンマークの一般住民1,700人を対象とした研究においても,随時血圧よりABPの心血管死亡や全死亡の予後予測能が高いことが報告されている.  

ESH-ESC20072)では,わが国の大迫研究をはじめとする近年の研究を根拠に,24時間平均125~130/80mmHg,昼間血圧130~135/85mmHg,夜間血圧120/70mmHgと一部基準値に幅をもたせた閾値を記載している.ABPと予後に関する前向きコホートのメタアナリシスであるIDACO(International Database of Ambulatory BP in relation to Cardiovascular Outcome)では,24時間平均130/80mmHg,昼間血圧140/85mmHg,夜間血圧120/70mmHgが随時血圧140/90mmHgの脳・心血管イベントリスクに相当していた3).今後,本結果を参考に基準値が再検討されることが予想される.  
ABPMによって知ることができる睡眠時の血圧は,通常昼間に比べ低下する.この夜間降圧の減少が消失していると心肥大,末動脈の変化,アルブミン尿の頻度および腎障害の進行といった高血圧臓器障害がより強いと報告されている.大迫研究ではABPMによる30分ごとの血圧変動の増大が,各種危険因子および血圧レベルで補正後も脳心血管死亡の増加と関連することが示された4).ただ,APBMは自由行動下での血圧を測定するという性格上,血圧日内変動性の再現性は必ずしも高くないことに留意しておく必要がある.

HBPMの臨床的意義

家庭血圧(home blood pressure;HBP)は,統一された条件で,一般には朝と晩に自己測定することで得られる.統一された条件とは,朝は起床後1時間以内,排尿後,座位1~2分の安静後,降圧薬服用前,朝食前に,また晩は就床前,座位1~2分の安静後の測定である(JSH20041)より).HBPは随時血圧に認められる白衣効果などのバイアスを含まない.したがって,個体の真の血圧値をより反映すると考えられる.また,HBPMは薬効持続性の評価にも有用である.薬剤による朝と夕の降圧度の比を求めたM/E比によって,ABPMによるtrough/peak(T/P)比のように降圧持続性は評価し得る.さらに,夜間睡眠時の血圧測定が可能な家庭血圧計も開発されてきており,将来は夜間血圧測定の分野においてもHBPMの利用が可能になると思われる.ESH-ESC20072)においては患者の治療コンプライアンスを改善する意味からも,HBPMを推奨している.

HBPMを用いた血圧管理

大迫研究において,HBPと全脳卒中・脳梗塞・脳出血の発症リスクとの関連は随時血圧より強かった.またPAMELA研究においても,随時血圧よりHBPの心血管死亡や全死亡の予後予測能が高いことが報告されている.

わが国における高血圧治療ガイドライン(JSH2004)1)では,135/85mmHg以上を高血圧とし,125/80mmHg未満を正常血圧の基準として採用した.ESH-ESC20072)では,130~135/85mmHgと基準値に幅をもたせた閾値を記載している.

HBPは1日のみの値であっても,随時血圧より優れた脳卒中予測能を有している.さらに,測定日数が増すほどHBPの予測能が増大することが大迫研究から報告されている5)().したがって,実地臨床においては長期の定点観測を行うことが肝要であり,HBPMは継続が大切である.

大規模介入試験であるHOMED-BP研究は,降圧目標レベルの差による予後,臓器障害進展を検討することを目的としている.今後はこうした大規模介入試験によってHBPMに基づいた降圧目標の策定が期待される.

家庭血圧と随時血圧の脳卒中予測能
図 家庭血圧と随時血圧の脳卒中予測能
性・年齢・喫煙・降圧薬服用・心疾患既往・高脂血症・糖尿病で補正した.
95%CI:95%信頼区間,RH:相対危険度.

用語解説-白衣高血圧
医療環境下では高血圧だが,非医療環境では正常血圧を示すことをいう.報告により異なるが,概ね高血圧患者の約30%を占めるとされている.
Recommended Readings
  1. Imai Y : Therapeutic Research, 2006, pp1413-1474
  2. Ohkubo T et al : Expert Rev Neurother 6 : 167-173, 2006
  3. Imai Y et al : Intern Med 43 : 771-778, 2004
  4. Imai Y : Blood Press Monit 4 : 249-256, 1999
References
  • 1) Imai Y et al : Hypertens Res 26 : 771-782, 2003
  • 2) The task force for the management of arterial hypertension of the ESH and of the ESC : J Hypertens 25 : 1105-1187, 2007
  • 3) Kikuya M et al : Circulation 115 : 2145-2152, 2007
  • 4) Kikuya M et al : Hypertension 36 : 901-906, 2000
  • 5) Ohkubo T et al : J Hypertens 22 : 1099-1104, 2004

※メディカルレビュー社 『高血圧ナビゲーター第2版』 第8章診断・治療指針より、出版社の承諾のもと一部改変し掲載しております。

 
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